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マラドーナサッカーの本質はロングカウンター

試合自体は見ての通りアルゼンチンが格下の韓国を一蹴したわけだが、マラドーナ監督の考えるサッカーがよく現れた試合だったなと思う。

マラドーナは監督として常に選手の傍らに位置し、選手への信頼を崩さない。
監督になる前の「10番の夜」という番組を見ていても、マラドーナは滑稽なほど若い選手たちを持ち上げる。  この番組にアイマールがゲストに来たことがあったが、アイマールに対して「君こそ天才だ」と言ったりする。 マラドーナとアイマール、2人の現役時代のプレーを知るものにとっては奇妙な印象すら受ける。 マラドーナが天才ならば、アイマールは凡人だ。 そのぐらいの差がある。 彼自身がサッカー選手として歴代最高峰だったにも関わらず、マラドーナは若い選手たちを称えるのに躊躇しない。 南米予選では最後まで苦しんだが、それでもマラドーナは選手を批判することはなかった。

この試合でもイグアインの先発起用にはマラドーナの特性がよく現れていた。 ナイジェリア戦でのイグアインは数多くのチャンスを逃した。 普通の監督であれば外したくなるところだ。 もちろん、イグアインしか能力のある選手がいないのなら仕方がないが、アルゼンチンにはディエゴ・ミリートという非常に優秀なFWがサブにいる。 それでもイグアインにもう1度チャンスを与える。 そして、イグアインがハットトリックを達成する。 こういう所がマラドーナの手腕を表している。

私がマラドーナを支持するのは、そのようなマラドーナの並外れた人間力を評価しているからではない。 マラドーナは戦術的にも妥当なサッカーをやっていると感じるからマラドーナを支持するのだ。

マラドーナの攻撃戦術の礎がカウンターであるのは就任当初から変わらない。 中盤にはマキシやホナスなど攻守にハードワークできる選手を置き、プレーメーカーは置かない。 最大のポイントはリケルメを外したことだ。

リケルメを代表に呼べば先発だ。 ベンチに置いておいて、試合の途中から出しても何の意味もないからだ。 リケルメを使えばリケルメを中心にチームを組まざるを得ない。 そうしなければ存在自体がマイナスになるのがリケルメのプレースタイルだ。 だからこそ、マラドーナ監督以前のアルゼンチンはリケルメ中心のチームだった。 これは自らの手でカウンターを封印することを意味する。

このチームにリケルメが存在していれば、メッシがあれほどの輝きを放つことは決してなかっただろう。 バルサでメッシが、マンチェスター・シティでテベスが活躍出来るのは、メッシやテベスが使うための中央のスペースを空けてあるからだ。 リケルメがいればリケルメがそのスペースを潰してしまい、メッシやテベスはリケルメの下僕となってしまう。 

もし、このままアルゼンチンが勝ち進んでもマラドーナを支持しない人たちは、「あれだけの選手がいれば、誰が監督をやっても勝てる」と言うだろう。 しかし、それは違う。 リケルメはアルゼンチン国内ではメディアの寵児だ。 人気も実績もある。 リケルメが代表から外されたとき、アルゼンチンサッカー協会の会長がマラドーナとリケルメを仲介するとマスコミに表明したぐらいだ。 このような選手を外すことがいかに難しいかは、日本代表の中村俊輔を見ていればよく分かる。 アルゼンチンでリケルメを外せたのはマラドーナだけだろう。 そこは正当に評価すべき部分だ。

マラドーナが、「メッシとテベスを中心とするカウンターサッカーにリケルメは不要」という戦術的に合理的な理由でリケルメを外したのか、選手時代の経験から本能でリケルメを外したのかは正直良く分からない部分だ。 マラドーナ自身のプレーしたメキシコW杯やイタリアW杯でも、アルゼンチンにプレーメーカーはいなかった(マラドーナはプレーメーカーではない)。 マラドーナをサポートするのはハードワーカータイプのホルヘ・ブルチャガの役割だった。 伝説の5人抜きも、5人抜けるスペースがあったからこそ生まれたものだ。

・マラドーナサッカーの戦術的な問題点

マラドーナのサッカーにもやはり問題点はある。 それは右サイドのホナスとベロンだ。 マラドーナの攻撃戦術はカウンターだから右SBの攻撃参加など必要ない。 右SBにホナスを置く意味はない。 ベロンもカウンターサッカーの中でプレーすると、どうしてもスピード不足が露呈する。 ナイジェリア戦の右サイドの不安定さは明らかに戦術的な問題であり、今後もアルゼンチンの弱点になる可能性がある。

もう1つの問題は、カウンターサッカーだと引いた相手を崩せないということだ。 実際、ナイジェリア戦でも韓国戦でも引いた相手を崩せてはいない。 ただ、崩せていないなかでセットプレーで早い時間に先制点を奪えている。 先制点を取れれば相手も引いて受けているわけにはいかなくなるから、アルゼンチンのカウンターサッカーにハマるというわけだ。
この2試合でセットプレーで得点を奪えたのは、幸運と相手が弱かったという側面が大きい。 これから相手が強くなっていく中で、セットプレーで得点を奪えるのかどうかがアルゼンチンにとって大きなポイントとなるだろう。

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Written by firefennec

2010年 6月 19日 @ 21:12

カテゴリー: サッカー, 海外